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 今日はスザクの誕生日である。
 年に一度しかないスペシャルな日を祝うために、ルルーシュは全力で張り切っていた。
 スザクの年齢の数だけ赤い薔薇を贈り、更にその後にプレゼントを手渡して、スザクの好物であるデミグラスソースのハンバーグに目玉焼きを乗せたカロリー過多なディナーを振舞い、ナナリーと共に食卓を囲んだ。
 三人で歓談して興奮気味のナナリーを寝かせた後は、リラックス効果のある香りの良い入浴剤を入れたスザク好みの熱めの風呂を用意して、新品のパジャマとバスタオルを置いておいた。風呂から上がったら出てきたらきっと喉が渇いているだろうから、冷えたミネラルウォーターも部屋に用意した。
 ベッドのシーツを取り替えて、皺ひとつないようベッドメイクし掛布団は足元に畳んでおく。取りやすい位置にティッシュを置いて、ローションとコンドームは二つ並べた枕の片方の下に隠した。前日は早めに休み、翌日の午前中は予定を空けてある。
 ルルーシュは完璧なシチュエーションと万全なコンディションを整えて、めくるめく一夜に備えていた。
 スザクもきっと、これからセックスすることを期待してこの部屋に来るはずだ。後はスザクが戻り、入れ違いでルルーシュがシャワーを浴びるのみである。
 いつもはセックスに対して受動的になりがちなルルーシュであるが、今日はスザクの誕生日なので積極的に色々なことをしてやるつもりだった。以前からこの日のために予習していたのだ。今日はその成果を存分にスザクに見せつけてやるつもりだった。
 これからの情事を思い、内心で高笑いするほどにテンションを上げていると、コンコン、と軽くノックがあってすぐに扉が開いた。相変わらず部屋の中の応答を待たない、無意味なノックだ。
「ルルーシュ、お風呂お先に。気持ちよかったよ」
 が、濡れた髪にほんのり上気した頬のスザクが柔らかい笑顔を浮かべて言うものだから、ルルーシュは苦言を呑み込んだ。夏物の薄青色のパジャマがよく似合う。ルルーシュは見立て通りだとぐっと拳を握った。
「じゃあ、俺も入ってくる」
「うん。……待ってるね」
 言いながら、スザクはぽふんとベッドに座った。スザクの声音にこの後の事への期待を感じ、ルルーシュは思わずごくりと唾を飲む。顔が上気していることを察し、くるりとスザクに背を向けた。一刻も早く、けれど丁寧に体を洗って戻らなければ。逸る気持ちを抑えながら、足早に部屋を出ようとした。
 ……が、そこで気付いた。自動で開くはずの扉が、開かない。
「ん?」
「どうしたのルルーシュ?」
「いや……扉が開かないんだ」
 言いながら後ろを振り返る。と、目の前に広がった光景にルルーシュは目を見開いた。
「なんだこの部屋は!?」
「えっ? あれっ!?」
 真っ白い壁に真っ白い床に真っ白い天井。先ほどまであったはずのソファやテーブル等の家具も、窓さえも消えている。ただ、スザクが座っていたベッドと部屋のドアだけが変わらずそこにあった。
「どうなっているんだ……? ここは俺の部屋じゃないのか?」
「広さや、ベッドから見たドアの位置は同じだけど……」
 ルルーシュは自動で開かなくなってしまったドアの、停電時用開閉ボタンを押して手動でドアを開けようとした。が、何度やってもびくともしない。
「……駄目だ。ドアは開かない」
「窓もないから、ここがアッシュフォード学園のクラブハウスなのかもわからないね」
「完全に閉じ込められたな」
 全くどういう原理かはわからないが、今スザクとルルーシュにはこの部屋の外の様子を窺う術も、増してやここから出られる術もない。イレギュラーな超常現象に襲われて、超常専門のC.C.の顔が浮かぶ。しかし今日は、スザクの誕生日を祝うためにいつもより多めにピザを与えておいた。まさかこれがC.C.の仕業というわけではないだろう。そもそも、ルルーシュとスザクをこんなところに閉じ込めたところでC.C.にメリットがあるとは思えない。ルルーシュがこんな場所から出られなくなったら、C.C.も困るだろう。
 出られない、と認識した途端、ルルーシュの頭にネット上で流れるある噂が過った。
「……まさかこれが……、セックスしないと出られない部屋か!?」
「セックスしないと出られない部屋!?」
 あまりに非現実的なフレーズに驚いたスザクが、ルルーシュの言葉をそのまま復唱する。
 ルルーシュは以前、『セックスしないと出られない』という一枚のメモが置かれた部屋に閉じ込められた体験談を語った掲示板をネットで見たことがあった。それも一件だけでなく、複数そんな書き込みがあったのだ。その書き込みに対して自分も閉じ込められたことがあるというレスをつけていた者もいた。どうやら両片思いの同士の二人や無自覚に思い合っている二人、それに付き合い立てでなかなか次のステップにいけないカップルなどが閉じ込められるようである。
 当然、読んだ時はデマであると思っていた。掲示板に集まった面々が、面白半分で話を盛って作り話に作り話が重なっているのだろう、と。しかし、その書き込みの内容にあった状況や部屋の景観が、現状と酷似しているのだ。
 そのことをスザクに説明すると、不思議そうに首を傾げられた。
「でも僕らはもう恋人同士だし……、セックスも初めてじゃないよね?」
「その通りだ。しかも今夜は既にそのつもりで準備も整っている。ここがセックスしないと出られない部屋だとしても、簡単に出られるということだ」
 ルルーシュは言いながらスザクの座っているベッドまで歩いていき、準備万端の証明である枕の下のローションとゴムを見せた。チェストに入れっぱなしにせずベッドに隠しておいたお陰でこの部屋にも持ち込まれていた。これで事はスムーズに進むだろう。
 スザクは呆れたような恥ずかしがっているような何とも言えない表情をしながら頬を赤くしていたが、結局何も言わなかった。
「と、ここまで言っておいてなんだが……本当にここが噂の部屋なのか、確証が持てない。前例によると、この部屋のどこかにメモがおいてあるはずだが……」
「メモ……、あぁ、これかな?」
 ベッドヘッドに置いたティッシュの横に、一枚の白い紙が置かれていた。スザクがとったそれを見て、ルルーシュはやはり噂の通りだと確信する。
「ああ、それだ。『セックスしないと出られない』と書かれているだろう?」
「……いやこれ……」
 そのメモを見ながら一瞬停止したスザクを見て、ルルーシュはどうかしたのかとひょい、とメモを覗き込む。と、その文字を読んだルルーシュが、ビシリと体を硬直させた。そこには、ルルーシュが想定していたものとは正反対のフレーズが書かれている。
「『セックスすると出られない』って書いてある」
 丁寧に読み上げたスザクの声を聞いて、見間違いでないことを知る。部屋と同じ真っ白なメモに、黒い文字で『セックスすると出られない』と書かれていた。何度読んでも文面は変わらない。
 張り切ってセックスの準備をしていたことを告白した矢先の真実に、ルルーシュは憤慨した。
「何なんだこれは。禁止事項以外に何も書かれていない。どの程度の期間の話をしているんだ? 曖昧過ぎる!」
「メモに怒ってもしょうがないだろ。気付いて良かった。出られなくなるところだったよ」
 こんな異常事態だというのに、スザクはどこまでも冷静である。イレギュラーに感情的になっている自分が少し恥ずかしくなって、ルルーシュはぴたりと一度口を閉じた。
「よくわからないけど、そのセックスしないと出られない部屋っていうのはセックスしたら出られたんだろ? ここも、今夜はセックスしなければ出られるんじゃないかな」
「……そうだな」
 その言葉に頷いて、ルルーシュはスザクの隣に腰を下ろして小さく息を吐く。
 今日はスザクの誕生日なのに。どうしてこんなことになったのだろうか。
 今夜、ルルーシュはスザクとセックスをするつもりだった。今日のこの時の為に色々と準備して、最後の総仕上げをしようとしていたのだ。それが突然このわけのわからない部屋に閉じ込められせいできなくなった。
 だというのに、スザクは全く気にしていないようである。まるで期待していたのが自分だけのように思えて、ルルーシュは少し不満に思った。しかし、それを表に出すのはあまりに幼稚であるとわかっている。
 前後の反応を思い返せばスザクも多少は期待していたようであるし、今回のことでスザクに非は何もない。だから、スザクに腹を立てるのは八つ当たりだ。そうわかっていた。
 ルルーシュは理性を持ってがっかりした気持ちと不満に思う気持ちを宥めた。
「……まぁ、俺はまだシャワー浴びていなかったし、『セックスしないと出られない部屋』でなくて良かったかもな」
 言葉にして、現状のまだ良かった点を模索する。そう、ここがセックスしないと出られない部屋だったのであれば、シャワーを浴びる前に身体を重ねることになるところだった。今までもシャワーを浴びる間もなく縺れるようにセックスをしたことはあったが、スザクが既にシャワーを浴びているのにルルーシュは浴びていない、という状況は一度もなかった。折角気持ちのいい風呂に入ったのだから、きっとスザクも気になるだろう。
「え、僕は全然気にしないけど」
 が、空気を読まないスザクはあっけらかんと言い放つ。人の気も知らないで、とルルーシュは再びムッとしてしまう。
「俺は気にする。今日は体育もあっただろう」
「どうせしてる最中に汗かくじゃないか。体育の後にしたこともあったし。……あ、それともあの時本当は嫌だった?」
 少し前に、体育の補習の後シャワーも浴びずに体操服のまま誰もいない更衣室でスザクとセックスした時の事を持ち出され、ルルーシュはぐっと言葉に詰まる。
「……嫌、ではなかったが……」
 寧ろ、良かった。という言葉は呑み込んだ。補習の後で体はへとへとだったが、身体を動かして汗を滴らせたスザクの色香に惑わされてつい許してしまったのだ。ルルーシュにとって、スザクの汗の匂いは興奮材料の一つだった。
「僕もだよ。寧ろ、ルルーシュの匂いが強いと興奮する」
「ば、馬鹿! もうこういう話はやめよう」
 ルルーシュが呑み込んだ言葉をさらりと言われ、一気に顔が上気する。セックスができない状態でこんなことを言われても生殺しにしかならない。それでなくてもそのつもりだったところを我慢しているというのに。
「……セックスしなければいいならさ、」
 言いながら、スザクはルルーシュの腰に手を回してぐっと抱き寄せた。スザクとの距離が近くなって、ふわりとボディソープの匂いが香る。
「ス、スザク」
「ハグとか、キスはいいんだよね」
 駄目だ、という言葉が喉元まで出かかったところで、スザクに唇を塞がれる。ぎゅうと力強く抱きしめられて、今まで以上にスザクの体温を感じて心臓が早鐘を打ち始める。何度こうして体温を重ねても、一向に慣れない。初めての時と同じように脈が上がってしまう。
 長く重なり合った唇が、一度ちゅ、とリップ音を立てて離れる。けれどすぐにもう一度重なり合った。そうしてぺろりと唇を舐められて、言葉なく口を開けろと要求される。
 流されるままに口を開けてスザクの舌を迎え入れたくなる欲求を、ルルーシュはぎりぎりのところで堪えた。そのまま心を鬼にして、スザクの胸板を押し返す。
「だ、ダメだスザク」
「……どうして? セックスはしないよ」
 わかっている。スザクもルルーシュと同じで、こんな部屋に二人で閉じ込められたまま出られなくなるなどあってはならないことだと思っているだろう。
 スザクには軍務がある。ルルーシュにはナナリーとの生活がある。それを理解していながら欲望に流されるはずがないのだ。スザクがこのまま事に及ぶとは、ルルーシュも思っていなかった。けれど。
「これ以上すると……その先ができないことが、もっとつらくなる……」
 既に抱き締められて唇を重ねてだけで堪らない気持ちになっているのだ。これ以上のことをしたらしただけ、それを抑え込むことにどれだけの精神力を使わなければならないのか。まだ、肉体的な兆しが出ていないここまでで、留めておきたいのだ。
 ルルーシュの言葉を聞いたスザクを見ると、ぽかんと呆気にとられたような顔をした。そうしてそのまま何秒間かかたまっている。
「スザク?」
 どうした、と目の前で手を振れば、スザクはハッと気付いてルルーシュの身体を離し、そのまま手を膝において俯きながら、ふーーーっと大きな息を吐く。
「そんなこと言われる方が堪えられなくなるよ……」
 絞り出すように言われて、ルルーシュはその意味を捉えた瞬間に顔を赤くする。体温を分け合うようなハグよりも、舌を絡めるような深いキスよりも、ルルーシュの言葉の方が堪えられないとスザクは言った。慌ててルルーシュの身体を離したのも、あの言葉を聞いたせいだったのだろう。
「そっ……なっ……お前が聞いたんだろう……!」
 他にどう言えというんだとばかりに、ルルーシュは顔を赤くしながらスザクを睨む。エメラルド瞳と視線がかち合うと、そこにセックスの前特有の火が灯っていることが見て取れた。ぞくり、とルルーシュの背筋に甘い痺れが走る。そんな目で見られても、今はできないのだ。
「……やっぱりここ、今すぐ出たい」
「出たいと言って出られるのなら、最初から出ている」
「……でも、試してはいないよね」
 そう言ってスザクは、ベッドから立ち上がってつかつかとドアの前に立つ。肩幅ほどに足を開き、両方の握り拳を腰の位置で構える。ルルーシュは何か少し嫌な予感が頭を過ったが、まさか気のせいだろうと振り払う。そうして、ベッドに座ったままスザクに声を掛けた。
「ドアが手動でも開かないことは最初に確認したぞ?」
「でも、壊せるかどうかまでは確認してないだろ」
 そう言った次の瞬間には、スザクは半身を大きく捻り、目にも止まらぬスピードで拳を繰り出していた。バガァンッと轟音を立てて、ドアは見事に外側に吹き飛んだ。その瞬間、部屋の向こうに真っ暗な空間が見えた。けれどすぐに、いつも通りのクラブハウスの廊下に戻り、気付けば部屋の景観もルルーシュの部屋に戻った。
「開いたよ、ルルーシュ!」
 両の拳を上げて嬉しそうなスザクとは裏腹に、ルルーシュは超常が物理に敗れる瞬間を見て呆然としていた。掲示板で見たセックスしないと出られない部屋も、スザクなら拳一つで解決できたのだろうか。相変わらずの化け物染みた体力馬鹿ぶりを見せつけられて、ついでに壊れたドアを直す業者の手配をしなければという義務感に駆られ、ルルーシュの頭は一旦冷静になった。そのため、先ほどまでの抑えきれなくなりそうな情欲はすんっと落ち着いてしまった。
 しかし、どんな方法で出られたにせよ、大事なのは結果だ。
「……まあ、兎に角出られて良かった。じゃあ俺はシャワーを浴びてくるから、スザクはドアを、ひとまず立てかけておいて……え?」
 ルルーシュが話している途中で、スザクは気付けばベッドに戻っていた。シャワールームへ行こうと立ち上がりかけていた筈なのに、あっという間に押し倒されてスザク越しに天井を見ている。パチパチと何度か瞬きをしても欲情したスザクの顔が間近にある事実は変わらない。
「シャワー、後でいいじゃないか。気にしないって言っただろ」
「いや、しかし……」
「ごめん、もう待てない」
「スザ、待っ、んんぅっ!」
 ルルーシュの声は、スザクにキスで塞がれて呑み込まれてしまった。
 けれどそうして激しいキスを受けている内に、すぐにルルーシュの瞳はとろけてしまうのだった。
 こうしてその日、二人は予定通りにめくるめく熱い夜を過ごした。
 
 
 






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枢木スザク君お誕生日おめでとうございます2017年夏!!!!!

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